103号室

オタクです 文章を書きます

クズは読め 『電気サーカス』(唐辺葉介)

 

 

 

 実家に帰ってもやることがないので本の感想です。

 

電気サーカス

電気サーカス

 

 

あらすじ 

まだ高速デジタル回線も24時間接続も普及しておらず、皆が電話回線とテレホーダイを使ってインターネットに接続していた時代。個人サイトで自己表現を試みる若者達がいた―。

 

 

 この作品はぼくがブログやらTwitterやらでたびたび言及してる瀬戸口廉也唐辺葉介の自伝的小説で、インターネット黎明期の混沌とした界隈の混沌とした交流と、それに飲み込まれる主人公が氏の強烈すぎる一人称描写によって巧みに描かれます。あんだけ言っといてまだ読み切ってなかったんかいというツッコミはやめてください。

ドラッグに浸り、思考も精神もドロドロになった主人公の描写は、今まで読んできたどんな文豪の作品よりも緻密、かつ現実的で、これはきっと作者の実体験に基づいてるんだろうなあ、と変な勘繰りを入れたくなってしまった。

 

 

 この本は、もともと週刊アスキーで連載されていたものをまとめたもので、短いエピソードの連続を積み重ねていく、という形式をとっているので、読みやすくはあるのですが、そのたくさんある短いエピソードの中に、「心が温まるエピソード」「感動できる小話」なんてものは一切なく、ただ泥水を飲まされている感覚が500頁近くにわたって延々と繰り返されます。そういった意味では瀬戸口廉也の作品の中でも特に人を選ぶ作品ではないのか、と思います。というか、主人公がどうしようもない無職な時点でたいていの人は拒否反応を示しそうなものなのですが。

 

 

 それにしても氏の一人称視点の作品は凄いなあ、と思いました。ぼくは氏のもっとも有名な作品である、『SWAN SONG』『CARNIVAL』『キラ☆キラ』(どれも18禁、瀬戸口廉也名義)は結構前にやってしまって、さらに当時で定価で手に入るものだった『PSYCHE』『つめたいオゾン』『暗い部屋』もまた少し前に読んだので、久々の瀬戸口節、という形になったのですが、見事にダウナーに持っていかれました。ここまで読む人の気分を滅入らせられる文章が書けるのは、氏か社会に生きる人事部/採用担当とかいうクソ生物か、ぐらいのでしょう。後者は一人残らず今すぐ死ね。労働滅びろ。社会機構を破壊しろ。

 

 

 具体的な内容について触れるのは止しますが、先に述べた通り、決してこの小説は読む人たちに、世界の明るさを説いたり前向きにさせるような作品ではありません。むしろその逆で、社会に対する憎しみだとか畏怖を増長させ、さらに、より「よく生きよう」という、極めて原始的人間的な欲求(馬鹿にしています)をバラバラに砕いてしまう。そして、作品内で生きている極めて自堕落かつどうしようもない人々に何かしらの憧れを抱いてしまう、そんな小説です。クズの皆さんは、必ずと言っていいほどに琴線に触れるような部分があるので、絶対に読んでください。今現在Twitterにどっぷりとつかってしまっているどうしようもない人間は特に。活字びっしりで477頁にわたる社会への恨み節は必読ですよ。

 

 

 

 

 

 

 ちょうどいい機会なので、自分が触れた範囲の瀬戸口廉也唐辺葉介作品について簡単な感想を述べておきます。

 

CARNIVL/SWAN SONGについてはこちら。SWAN SONGは今半額なので買ってください。CARNIVALもそこそこの頻度でセールやってます。

 

SWAN SONG

kousaten16g.hatenablog.com

www.dlsite.com

 

 

CARNIVAL↓

kousaten16g.hatenablog.com

www.dlsite.com

 

 

 

キラ☆キラ 『キラ☆キラ』特設ページ

www.youtube.com

 

 エロゲOPまとめとかそういう類の動画でよく見るこの作品も瀬戸口廉也の作品です。氏にしては明るい作品で、パンクロックバンドを組んだ若者が全国を回り、様々な人と出会い成長する話…………というのが前半で、後半はやっぱり瀬戸口。ダウナーで鬱です。特にメインヒロインであるきらりルート(OPのピンクの髪の子です)、それもバッドエンドの方が評価が高いですね。どうしてもメーカーの色的にハッピーエンドが必要だったんでしょう。力の入り具合も、バッドの方が強かった気がします(勿論ベスト側にも良いところはあるのですが)。感想サイトとかではよくこの作品が瀬戸口廉也入門として最適、みたいに言われてますね。入門ならぼくは個人的にはSWANSONGを推しますけど。というか全部やってほしいですけど。

www.dlsite.com


 無粋だとは思うけど瀬戸口廉也三部作に個人的なランクを付けるとしたらSWAN SONG≧CARNIVAL>キラ☆キラって感じです。

 

 

 

 さてここからは名義が変わって唐辺葉介作品。まずは『PSYCHE』。一時期はエライ値段が付いていたようですが、文庫版での復刊もあって今は落ち着いています。頼むから死体泥棒とドッペルゲンガーの恋人と犬憑きさんも復刊してくれ。 頼むーっ!

PSYCHE (星海社文庫)

PSYCHE (星海社文庫)

 

あらすじ

どうせ僕には、自分が見ているものしか見ることが出来ないんだ。「僕」には死んだはずの家族たちの姿が見える。一人、絵を描きながら過ごす「彼ら」との奇妙な日々がやがて、「僕」の本質を引きずり出す…。「しかしこの家は気持ち悪いな。きみの内臓のなかにいるみたいだ」。

 

 さてこの作品ですが、あらすじを読んでわかる通り、氏らしいぶっ飛んだ設定ですね。事故で死んでしまった家族が見えてしまう主人公が、徐々に主人公の周囲にいた人々を拒絶し、殻の中に閉じこもっていく物語。幻覚作用のある蝶の羽根を食べ続ける主人公の内面描写は、流石としか言えません。極彩色の幻覚の中にトリップしたような、そんな気分が味わえる作品です。

 

 

 

 さて次に『つめたいオゾン』です。

つめたいオゾン (富士見L文庫)

つめたいオゾン (富士見L文庫)

 

あらすじ

その日、俣野脩一は訪れた施設の白い部屋で、ひとりの少女と出会った。天使のように白い肌と髪を持つ彼女の名は中村花絵。二人はお互いが、ある病理を患っていることを告げられる。『アンナ・メアリー症候群』。それは他人の感覚を共有し、やがて思考や感情までも融け合ってしまうという病。脩一と花絵は幼少期より、共有した視界に映る生活を、夢に見ることで繋がっていたのだ。出会う前から誰よりも深くお互いを知っていた、少年と少女の辿る数奇な日々。そして病を宣告された二人が向かう未来とは―?

 

 三人称小説です。氏の作品にしては爽やかな読後感ですが、「氏にしては」なので注意。少年の中に、監禁され恥辱を受けている少女の思考や感情がノイズとして混じっていく描写は一読の価値アリ。 短めなのでとっつきやすい。感情と思考が縺れ合う二人の描写を通して、読者自身もその思考に引き込まれていくような、そんな作品です。

 

 

 

 最後に、ぼくが氏の作品で一番好きな『暗い部屋』を紹介したいと思います。

暗い部屋 公式サイト(ミラー)

暗い部屋

暗い部屋

 

 

あらすじ

光の入らない閉ざされた部屋で、少年は母の死体のそばに座り込む。腐り始め、においを放つ死体を眺めながら、少年は慌てることもなく静かに自分の死を意識する。 やがて空腹と疲労にに耐えかね、寝そべったそのとき、部屋のドアは開かれ、少年の新しい生活が始まる。 諸事情により出版停止となった唐辺葉介の小説をデジタルソフト化。

 

 出版停止されたのでデジタルノベルとしてPCソフトとして出そう、といった感じ。禁忌に触れる部分も多々あり、プレイすると「そら出版停止されるわ」となること間違いなし。個人的には、上の公式サイトの推薦文にある「お金を払う価値のある胸糞悪さ」というフレーズがお気に入りです。

 そんなこの作品ですが、注目すべきはこれに付属している、短編的な小冊子です。この小冊子はすごく短いエピソードをまとめたものですが、氏の持つ毒気120%盛りといった感じで、文章を読むだけでトリップ出来てしまいそうな、強烈な作品がいくつも載っています。ほんの2ページ読んでいただくだけで、そのサイコパス具合が味わえるのではないか、と思います(画像は転載したもので申し訳ないです)。しあわせ最高。

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 さて、長々と感想を書いてきましたが、情けないことにここまでとなります。プレミアがついてるのは持ってないんです……泣き泣き。氏の作品にはコアなファンが多い上、春に「瀬戸口廉也」名義の新作が二本も発表された(ヤッター!嬉しい)ので、興味があるなら早いうちに買った方が良い気がしますよ。最後にそれについて少し触れておわりにします。

 

・BLACK SHEEP TOWN

BLACK SHEEP TOWN

 

 4月1日に突如として発表された瀬戸口廉也の新作。誰もが「え、嘘だよね」と疑ってかかったことはまだ記憶に新しいです(実際僕もそうでしたし)。この作品に関してはキービジュとスタッフしか発表されていないのでとくに言うことがないのですが、個人的にさっぽろももこ氏との組み合わせがなんかアツいと思いました。瀬戸口廉也がシナリオのみならず監督も兼任しているので、氏の世界にまたドップリと浸/憑かれるような、そんな作品を期待しています。

 

 

OVERDRIVE FINAL

 これも4月1日発表でした。一日に二作も新作が発表されて生きた心地がしなかった、自分は幻覚でも観ているのかと思ったファンは多かったはずです。ぼくもそうだったし。

 

lineblog.me

 このプロジェクトにかんしてはmilktubのこのブログに詳しく書いてありますね。クラウドファウンディングでどれだけ集められるか、期待したいと思います。正直全年齢じゃなくてアダルトの方が良かったと思わなくもないですが(エロ的な意味じゃなく、氏の持ち味を味わうとか云々)、まあその辺はBLACK SHEEP TOWNに任せ、オバイブ流の瀬戸口を見せてもらいたい、と思っています。不思議なTシャツって一体なんなんでしょうね? ぼくにはまったくわかりませんが……。

  

 

 

 今日のブログ更新はこのくらいにしておきます。今日の夜、地元の祭で、地元出身のバンド(ちょっと有名な人)がライブやるらしいので今から楽しみです。最後に、暗い部屋のEDで使われている楽曲を貼って終わりにします。

www.youtube.com

祭までは暇だし自殺でもしてようかな。オワリ

 

 

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